+αな暮らし

メーカーでインハウスのファシリティマネジャーとして建築・不動産に関する仕事をしています。このブログでは建築・不動産・施設管理系の資格挑戦についてと、革製品を始めとした愛すべきプロダクトについて書いています。

一級建築士《法規》ちょっと面倒くさい容積率の算定問題

一級建築士の勉強だが、法規から始めて、現在「容積率の算定」問題に取り組んでいる。

 

この問題は法規なのに多少計算が必要な面倒くさいやつだ。と言っても計算自体は簡単で、ステップを踏んで解いていかないといけないのが面倒臭い。法規の試験は往々にして時間が足りなくなるので、手間のかかる容積率問題は嫌われがちだ。

 

しかしながら、ちゃんとステップを理解して解いていけば必ず解ける問題でもあるので、ここは一つ、備忘録的に解き方ステップを書いておく。📝

 

【CONTENTS】

 

出題例(H28-法規No.15)

まず、容積率の算定問題は下の写真のように概要図付きで出題される。

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ちなみにこの画像の問題と解答の選択肢は以下の通りとなる。

図のような敷地において、建築基準法上、新築することができる建築物の容積率(同法第52条に規定する容積率)の最高限度は、次のうちどれか。ただし、図に記載されているものを除き、地域、地区等及び特定行政庁の指定、許可等は考慮しないものとする。(H28-法規No.15)

この問いに対する選択肢は…

1. 42/10

2. 48/10

3. 50/10

4. 55/10

となっている。

容積率の算定問題は、このように容積率の最高限度を問う問題と、もしくは延べ面積の最大値を問う問題の大きく二つに分かれる。

 

ちなみに上記の問題に対する正解は、2番目の「48/10」になるが、ここから、具体的な解き方のステップを書いておく。

 

ステップ1. 前面道路の幅員確認(法52条1項、2項)

■前面道路幅員が12m以上

   →指定容積率(Vs)が容積率の限度となる。

■前面道路幅員が12m未満

   →指定容積率(Vs)前面道路幅員による容積率(Vd)を比較していずれか小さい方の数値とする。

ここでいう前面道路とは、前面道路が2つ以上ある場合は最大幅員を選ぶことになる。

また、指定容積率(Vs)とは都市計画で定められた数値となり、基本的には問題文の概要図内に記載されている。

 

このステップ1で、 仮に前面道路幅員が12m以上だった場合、この後のステップ2〜5はやる必要がなくなり、いきなり敷地面積に指定容積率(Vs)を掛ければ延べ面積の最大値がでる。しかし、問題としてそんな簡単に終わるハズもなく、基本的には前面道路幅員は必ず12m未満で出題され、ステップ2以降に進むことになる。

 

ステップ2. 特定道路による前面道路幅員の緩和(法52条9項、令135条18)

ステップ2では、ちょっと計算が発生する。

まず、付近に特定道路があるかどうかを確認する。ここでいう特定道路とは幅員15m以上の道路を指し、三つの条件を確認することになる。

幅員15m以上の特定道路がある

②前面道路幅員が6m以上12m未満である

③敷地が特定道路から70m以内の距離である

この3条件を満たした場合、下記の計算式により、前面道路幅員が緩和される数値を算出することになる。

前面道路幅員の緩和Wa=(12-特定道路へ接続する前面道路Wr)×(70-特定道路から敷地までの距離L)/70

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算定結果で出た数値が前面道路幅員に加算される数値となる。

 

それでは実際に、前述のH28-法規No.15問題を元に計算してみよう。

前面道路幅員の緩和Wa=(12-特定道路へ接続する前面道路Wr8.5)×(70-特定道路から敷地までの距離L20)/70

(12-8.5)×(70-20)/70 = 2.5m

この2.5mが前面道路8.5mに加算される数値になるので、前面道路は8.5m+2.5mで11mと見なされる。

 

ステップ3. 前面道路の最大幅員確認

ステップ3はシンプルだ。敷地が接している前面道路のうち、最大幅員がいくつか確認するだけである。

H28-法規No.15問題を例にとると、前面道路は特定道路に接続する北側が8.5m、西側道路は9mとなっており、最大幅員は9mと思ってしまいがちだが、ここでステップ2の加算が出てくる。特定道路に接続する北側道路は特定道路による幅員緩和を受けているので、8.5mに緩和2.5mが加算され11mと見なされている。

なので、ステップ3の前面道路の最大幅員は11mが正解となる。

 

ステップ4. 前面道路最大幅員による容積率Vdの計算(法52条2項)

ここでもちょこっと計算が出る。

まずは下記の計算式を暗記_φ(・_・

《住居系》   前面道路最大幅員×4/10

《非住居系》前面道路最大幅員×6/10

ここでいう住居系や非住居系は用途地域のことになる。

例えばH28-法規No.15の問題だと、概要図上、敷地の真ん中できれいに右左で用途地域が分かれており、左側が第一種住居地域(以下、一住)なので住居系、右側が商業地域(以下、商業)なので非住居系に分類される。

なので、前面道路最大幅員による容積率Vdの算定は…

《一住》11m×4/10 = Vd 44/10

《商業》11m×6/10 = Vd 66/10

となる。

 

ステップ5. 容積率の限度の決定(法52条1項、2項)

いよいよここで容積率が決まる。

ここは簡単で指定容積率Vsと、前面道路幅員による容積率Vdを比較して、いずれか数値の小さい方を採用するだけだ。

ステップ1でも述べた通り、指定容積率Vsは問題文(概要図)内に明記されており、前面道路幅員による容積率Vdはステップ4で出た数値になる。

ここでも実際にH28-法規No.15の問題で解いてみる。

《一住》指定容積率Vs 30/10<前面道路幅員による容積率Vd 44/10

《商業》指定容積率Vs 70/10>前面道路幅員による容積率Vd 66/10

結果、容積率の限度は、一住が30/10、商業が66/10となった。

ちなみに、H28-法規No.15の問題は容積率の算定限度を問う問題で、正解は48/10と言ったが、先ほどの一住30/10と、商業66/10を加重平均した値になる。敷地面積のど真ん中できれいに一住と商業で分かれているので単純に30+66/2すれば48という数値が導き出される。

 

これにて、H28-法規No.15問題は終了。

めでたしめでたし☺️となるパターンが容積率の最高限度を問う問題である。

 

最初に述べた通り、もう1パターン 延べ面積の最大値を問う問題の場合もある。

そちらの場合は、まだステップが続く。

 

ステップ6. 敷地面積の計算

これは大したことない。単純に敷地面積を計算するだけだ。問題の概要図に敷地の長さは書かれているので、掛け算するだけで良い。

H28-法規No.15問題は容積率の限度をだして終わりだったが、仮に延べ面積の最大値を問う問題だった場合を仮定して進めてみる。

一住も商業も25m×40mだったので、どちらも1,000m2になる。

 

敷地面積の計算で気を付けることとしては、前面道路が幅員の狭い2項道路の場合は、道路中心線から2m後退した部分は敷地面積に算入されないため、その分を差し引く必要がある。

同じ前面道路が2項道路で、かつ道路の反対側が川であった場合は、道路の反対側の境界線(川との境界線)から4mが敷地境界と見なされるので、その分も面積から引かないといけない。

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ちなみに延べ面積の最大値を問う問題の場合は、当然このステップ6の敷地面積を計算する必要があり、大体が2項道路に接しているパターンなので注意が必要だ。🤨

 

ステップ7. 延べ面積の最大値(法52条1項)

いよいよ最終ステップ。ステップ6で計算した敷地面積と、ステップ5の容積率の限度を掛ける。これもH28-法規No.15問題を例に計算してみよう。

《一住》敷地面積1,000m2×指定容積率Vs 30/10=3,000m2

《商業》敷地面積1,000m2×前面道路幅員による容積率Vd 66/10=6,600m2

3,000m2と6,600m2を足した9,600m2が延べ面積の最大値となる。

 

このステップ7でも気を付けることがある。それは算入適用床面積の有無の確認だ。

具体的には…

①住宅、老人ホーム等の地階部分(建築物全体の1/3までを限度として算入しない)

②自動車車庫等の部分(建築物全体の1/5までを限度として算入しない)

③備蓄倉庫・蓄電池設置部分(建築物全体の1/50までを限度として算入しない)

④自家発電設備・貯水槽設置部分(建築物全体の1/100までを限度として算入しない)

⑤エレベーターの昇降路、共同住宅の共用廊下・階段(該当部分の全面積を算入しない)

これらの部分がある場合は、あらかじめ問題文の文章に明記されているので、計算した延べ面積の最大値に加算することを忘れないようにしないといけない。特に⑤のエレベーター昇降路ありはよく出題されている。

 

これにて長々と書いた容積率の算定問題についての解き方ステップは終了となる。

容積率の算定問題は毎年必ず出題されるわけでもなく、建ぺい率の算定問題と交互に出題されている感じだ。つまりは2年度に1回程度1問出るかどうか、といった問題である。それでも捨てる訳にはいかないので、解き方を覚えておかなくてはならない。🧐

 

次は建ぺい率の解き方でも書くことにする。

 

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